オーダーメイド左官材のご相談をいただく際、私たちが大切にしていることがあります。
それは単に「色をつくる」「質感をつくる」ことではありません。
その場所にしかない物語を、素材として表現することです。
今回ご紹介するのは、ある地方公共施設の劇場で採用いただいたオーダーメイド左官材の事例です。
採用いただいたのは劇場1階部分の床。
施工面積は約1,000㎡にも及ぶ大規模なプロジェクトでした。
はじまりは「既製品では実現できなかった」こと
ご相談当初、設計チームは複数の競合製品を検討されていました。
しかし、求めるデザインと予算のバランスが合わず、計画は難航していたそうです。
そこで私たちにご相談いただいたのが、オーダーメイド左官材でした。
求められていたのは、劇場という公共空間にふさわしい重厚感と存在感。
そして、地域とのつながりを感じられる素材でした。
地域の砂利を床に取り込むという提案
打ち合わせを重ねる中で私たちが提案したのが、建設予定地周辺で採取される砂利を素材として取り入れることでした。
劇場は地域の人々が集い、文化を育む場所です。
だからこそ、その土地の素材を空間に取り込むことに意味があると考えました。

完成後、利用者の方はその床を見ても地元の砂利が使われていることに気づかないかもしれません。
しかし、その土地の記憶や風景が素材の中に息づいている。
私たちはそんな左官材づくりを目指しています。
求められたのは「深い黒」
もう一つの大きなテーマが色でした。
設計チームから求められたのは、一般的なグレーではなく、深みのある濃い黒。
劇場という非日常空間にふさわしい落ち着きと緊張感を兼ね備えた色です。
黒は単純に顔料を増やせば良いわけではありません。
使用する骨材や素材とのバランスによって、見え方や奥行きが大きく変わります。
試験施工を繰り返しながら、空間に馴染みながらも存在感を放つ黒を追求しました。
施工後に表面を研磨する施工方法が採用され、混ぜ込まれた砂利や骨材が表情として現れます。
光の当たり方や見る角度によって変化する豊かな表情。

そして、人が歩くたびに生まれる経年変化。
劇場という多くの人が利用する場所だからこそ、年月とともに魅力が増していく素材を選択いただきました。
オーダーメイドだからできること
私たちは日々、さまざまなオーダーメイド左官材を開発しています。
色を変えること。
質感を変えること。
機能を加えること。
それらももちろん大切です。
しかし、本当に価値があるのは、その場所だけの理由を素材に込めることだと考えています。
今回の劇場では、地域の砂利を取り入れることで、その土地らしさを空間に残すことができました。
オーダーメイド左官材は単なる建築材料ではありません。
その場所の物語をつくる素材でもあるのです。
もし現在進行中のプロジェクトで、
「既製品では表現できない」
「その場所ならではの素材をつくりたい」
そんな想いがありましたら、ぜひ一度ご相談ください。
私たちのLABでは、素材選定から試験施工まで一貫して対応しています。

